情報企画 〔展開〕

「情報資産」を外向きに展開する「広報」の手法について解説いたします

"報道"と異なる「広報」の本質

前職で8年間の欧州駐在を終え1998年に帰任すると、2000年に"IT革命"が流行語大賞を受賞するなど、実業界はインターネット時代に突入します。そこで、前職で自社初の英語版ウェブサイトを企画制作し、2001年~03年の間で包括的な国際広報戦略を構築しました。その内容は「広報」の原理原則として、15年以上経っても何ら色褪せていません。その実践過程で、「広報」に先立つ「情報企画」の意義に気付くことができました。このページの各項目では「広報」の本質を図式化し、「情報資産」の展開方法として紹介いたします。

報道と広報の違い

マスメディア新聞TVなどで時事問題を"報道"する行為には、公共性中立性客観性正確性などが求められます。世界とつながるための"事実情報"を、一般大衆に伝達することが目的だからです。原則的にその先には関知せず、問題提起に至ったとしても、情報の受け手読者・視聴者から直接行動を引き出す意図は持ちません。

 

一方、事業活動として行う「広報」はあくまで手段であり、目的は情報の受け手から次の行動を引き出すことです。最後には、商材の契約や購入を行ってもらい、さらに得意客リピーターへと成長して頂かねばなりません。そのため「広報」には、点で終わらず線にする、線を重ねて面にする、面を組み上げ体にするという、継続的で立体的な情報伝達が求められます。得意客ともなると、自社の歴史や商材の知識が入社3年目の社員より詳しかったりするのはその表れです。「広報」でも、嘘をついたり騙したりすることが許されないのは"報道"と同じですが、特定の意図を持って受け手の意識に働きかける行為ですので、内容性質手法などが必然的に"報道"とは異なってきます。

情報の継続的伝達
「広報」メディアの機能と分類

継続的な情報伝達を行うには、各「広報」メディアの特性を理解した上で、戦略的に活用することが求められます。私が社会人になって欧州で「広報」活動を行った1990年代、日本に帰任して"IT革命"以降の2000年代、そしてスマホの普及が著しい2010年代とで、メディアの勢力図は大きく変遷してきました。今後も様々な技術革新によって、想像だにしない新しいメディアが誕生し、「広報」担当者らは都度その対応に追われていくことでしょう。


しかし、メディアがどうであれ、情報の受け手の関心を誘導強化するという「広報」の機能は変わりません。その観点から、便宜上「広報」を大きく3つに分類しました。「告知広報」「検索広報」「直接広報」です。2001年の初分類時は「検索広報」でなく「IT広報」後にICT広報でした。当時はウェブサイトやメールマガジン程度だったのですが、次第にウェブ広告やEコマースなど、前後の「告知広報」や「直接広報」の領域へもICTが広がったため、2018年の当社創業を契機に「検索広報」へと改名しました。顧客の主体的な行動に焦点を当てた表現です。

  • 告知広報 主にマスメディアを通じ、顧客に自社や自社商材などを簡潔に告知する広報活動

  • 検索広報 主に ICTメディア個人端末を通じ、顧客自身の手で情報を検索させる広報活動

  • 直接広報 主にイベントや店舗の対面営業電話対応もで、顧客と直に接して行う広報活動

広報メディアの分類と機能

「広報」を3種に切り分けた要素は2つ、"対象数" と "関心度" です。一軸方向に時間軸を取ると、最初に対象とする顧客候補は多ければ多いほど効果的です。しかし、関心度はほぼレベル0です。そこから始め、有益な情報を繰り返し提供することで関心度を高めていきます。高い関心を示して、適切な対価を支払ってくださる方がお客様です。お金が無いのに関心だけ強いのは "冷やかし" で、関心の無い人に買って頂くのは "押し売り"か"チャリティー" で、どちらもビジネスの本筋から外れています。

つまり、実はここ凄く重要なのですが、「広報」とは "顧客を選定する作業" であるということです。新卒の学生が就職試験に臨むようなもので、エントリーから始まって筆記試験を通過し、最終的に役員面接に辿り着く過程に似ています。学生にも選択権、面接官にも採用権があるように、顧客が商材を選定するけれど、事業主も顧客を選定する訳です。その結果、時間軸の最終地点では幾度もの選定を通過した関心度レベル3の有望顧客だけが残ります。絞り込まれた上質かつ適量の顧客に対し、対面営業直接広報を仕掛けるという構図です。

蛇足になりますが、前職欧州で営業活動を開始した1990年代初頭、会社PCのOSはMS-DOSで、ソフトはせいぜいワープロかデータベースくらいでした。英国以外の数箇国に新規営業を任された際、国別業界別の企業ディレクトリ冊子を購入して、訪問すべき企業の洗い出しを行ったものです。上図で示す"非効率領域"のど真ん中の手法でした。N国にはDM発送、D国には単独でアポなし訪問、I国でやっと商社の現地国籍営業マンと一緒に鉄道で数都市を回り広報しました。直接会う対面営業は重要ですが、それ以前に顧客の選定を合理的効率的に行う必要があります。

「メディアクロス広報」の遂行

数ある「広報」メディアを3種に分類してみると、根本的な機能と関係性が明らかになりました。そこから導き出された結論は、「広報」の目的関心の誘導強化と行動喚起を達成するため、各種メディアを相互補完的に、縦横に網を張り巡らせるように、戦略的に駆使する必要があるということです。

前職で2001年に策定した国際広報戦略において、この戦略的な情報伝達方法を「メディアクロス広報」と命名しました。いつ頃からか"クロスメディア"という表現が台頭してきましたが、重要なのは"メディア"そのものではなく、各種メディアを縦横に交錯させつつ、繰り返し顧客の関心を誘導強化し「広報」の目的を達成する"方法論戦略"の方です。従って、当社では「メディアクロス広報」という表現を使用しています。

 

この方法論は、事業における「広報」の定石、公理公式、テンプレートなどに相当し、アヴァンサイト流に定義するなら『広報=メディアクロス広報』です。もし、御社の広報責任者がこの方法論にお気付きでないなら、十中八九御社は情報統制不全の状態に陥っています。ご用心ください。

メディアクロス広報

個別のメディアは、挙げきれないほど多種多様です。3種のどれかにすんなりとは当てはまらないものもあります。メディアの分類が本項の趣旨ではありませんので、前職で2003年に実施した内容を例に、「メディアクロス広報」の実践方法を紹介いたします。当時活用したメディアには次の図のために番号を振っています。上の表に含まれていないメディアについても、御社の営業戦略や達成目標を踏まえ、積極的にご活用ください。

​例示するのは、新技術新製品の発表会にまつわる「広報」活動です。イベントは「直接広報」の代表例です。自ら足を運んで頂くのは結構ハードルが高く、告知から実施後のフォローアップまで、「メディアクロス広報」が一つのパッケージとして必要です。先述した通り「広報」は顧客を選定する作業ですので、一つのイベントを開催する際、①関心があると考えられる顧客、②直接案内したのに参加しない/できない顧客、③足を運んで参加して下さる顧客などを選定しつつ、予め各層への対応を準備し、きめ細かく実施していきます。

メディアクロス展開図

上図の例で重要な点は2つあります。まず、一貫した同一テーマで「メディアクロス広報」を実施するということ、そしてイベント実施日の展示やプレゼンテーション、個別の接客も「メディアクロス広報」の一環「直接広報」であるということです。日常の体験ですが、TV広告や折込広告で知った商材を目当てに店舗を訪ねると、接客者がその商材に不案内で終始チグハグに応対されることが多々あります。私は職業柄「ああ、教育不足」と認識できますが、大多数の顧客は単純に不快な思いを抱えたまま終わるでしょう。

 

物言わぬ顧客へのネガティヴ接客経営者から見えないは、ボディブローのようにダメージを蓄積ブランドイメージ失墜し、気が付けばKO売上減少顧客離れされているという事態に陥ります。これは営業の戦略立案者、宣伝する広報担当者、接客する現場対応者の間で協働体制が出来上がっていないためです。アルバイト職員も含むであろう接客側に、個人レベルで高度な応対を要求するのは非現実的です。この解決策は、「情報企画」責任者または専門部署が全体を「メディアクロス広報」として統括し、接客時の応対までしっかりと企画制作して、事前に現場教育する方法しかありません。

そこで、同一テーマによるパッケージ化が求められます。パッケージには大小強弱があり、「情報化」工程で示した全体的な事業戦略や期間地域商材で異なる営業戦略、その一環の単発イベントやキャンペーンなどに応じて別個に組み立てます。同一パッケージ内では、まずキーワード記憶させたい文字情報とキービジュアル印象付けたい画像情報を統一します。それらの単位情報」を軸に「複合情報」を組成し、各種メディアへと展開を図っていきます。

 

制作担当者は自分の本業なので、次々と新しい情報を作りたがります。しかし、顧客には関係ありません。それどころか、何かを浸透させるには、同じ情報を一貫して訴求し続ける必要があります。従って、伝達する情報の変化は、戦略や商材が変わった時、もしくは十分浸透して顧客が飽き始める時に起こします。メディア制作という末端業務に心囚われてしまうと、押さえるべき本質を見失いかねません。"大切なものは目に見えない"からです。

 

ここに、事業の源流から一貫して見えない本質を顕在化させる「情報企画」の尊さが存在しています。

「情報企画」とは何か